、どこか怪我しているのか」

 爽やかな朝の食堂にアサトの声が響いた。それは憂鬱で、でも青く晴れた日の始まりの出来事。



The Blue day,but the Blue sky day






 その日は朝から晴れていた。 は気持ちよく目を覚まし、身支度を整えて厨房へと向かう。バルドの手伝いを軽くこなした後、自らも朝食を摂るべく食堂へやってきた。

 食堂にはいつもの猫――コノエ、アサト、ライの三匹しかいなかった。悪魔たちは出掛けているようだ。相変わらず睨み合っているアサトとライを横目に見て、 は朝食を平らげた。
 そこへ、アサトが近付いてきて先程の言葉を発したのだった。




「――してないけど。何で?」

  が怪訝に思いアサトに問うと、アサトはくん、と鼻を寄せた後に眉をひそめて心配そうな顔つきで言った。

「…… から血の臭いがする」

「血? 血なんて――あっ……」

  はアサトの物騒な言葉にいぶかしんだが、ハッと一つの可能性に思い当たり、言葉を途切らせた。

「怪我、してるのか?」

 アサトの言葉を聞き付けたのか、コノエも傍に寄ってきた。二匹に心配そうな目で見つめられ、 は視線を彷徨わせた。

「いや、怪我っていうか……」

、見せてみろ。早く手当てをした方がいい」

「あの、そうじゃなくて……」

(き、気付いてよ〜〜!)

 今にも の下衣をめくり始めそうなアサトを慌てて制し、 は助けを求めるべく残った白猫に視線を向けた。
 壁にもたれたライは三匹の様子を静観している。……全く助ける気はないようだ。
 さらにはいつ入ってきたのか、バルドがにやにやと成り行きを見守っている。

(あいつら……いつかコロス!)

 瞬間的に芽生えた殺意はとりあえず置いておいて、 は自分を囲む二匹を見た。
 事情を気付いては、くれないようだ。理由を話さなければどうあっても放してくれなさそうな様子に、 は溜息を付くと小さく口を開いた。

「怪我じゃなくて――月のもの、なのよ。……だから放して」

 二匹に言い聞かせるように告げると、余計に恥ずかしくなった。何だってこんなことを言わなくてはいけないのだ。顔が赤くなったのが分かった。
 立ち上がろうと二匹を見ると、アサトは顔を赤くして言葉を詰まらせていたが、コノエはきょとんとした顔をしていた。

「月のものって――何だ?」

「……ッ」

 首を傾げて聞いてきたコノエに、 の顔が更に染まる。どうとも答えられず、ようやく「そこのエロ猫に聞きなさい……」と搾り出すと、 は立ち上がって食堂を後にした。





「ああ、もう面倒くさい……」

 自室に戻って手当てを済ませた は、寝台に寝転がった。
 月のもの――最近忙しくて、全くその存在を忘れていた。月に一度、発情期などに関係なく思い出したようにやってきては数日間血を流し、 を悩ませる。二つ杖もこんなものに毎月付き合っていたのだろうか。 は二つ杖の雌に同情した。

 自覚したら、何だか腹部が少し痛くなってきたようだ。 は腹を抱えるとうつ伏せになった。

 それにしても――


(コノエ、知らなかったのかな……)

(アサトの顔、真っ赤だったな……)

(ライの奴、助けてくれたっていいのに――)

(バルド、覚えてろ……)


 

 

 

 

 

 

 

 

 



  コノエ編


 しばらくすると、腹の痛みも治まってきた。 は寝台から起き出した。天気もいいことだし、せっかくだから何かしよう。そう思い、荷物を掴んで階下へ降りた。

 バルドに頼んで食堂を借り、 は溜まっていた剣を研ぐ事にした。宿に出しておいた看板は意外と好評で、宿泊客を中心に何本か研ぎの依頼が来ていた。今日はこれを片付けることにしよう。

  がひとり食堂で作業をしていると、遠慮がちにノックする音がした。フードを被って が扉を開けると、コノエが耳を下げて立っていた。

「あれ、コノエ。どうしたの? ……まあ入りなよ」

  が促すと、コノエが静かに入ってきた。作業を止めて が腰掛けると、コノエが持っていた皿を の前に突き出した。

「これっ……飲んでくれ」

「えッ。何、スープ? ……ありがと。でも何で?」

 皿の中身は野菜スープのようだった。まだ温かそうだ。 は怪訝にコノエを見上げた。

「その、俺、月のものって知らなくて……恥ずかしい思い、させたから……」

「あ、ああ、それ……」

「月のものの時は温かい物がいいって、バルドが言ってた。だから……」

「そ、そう……」

 気圧されて、 が頷く。というか、月のもの月のもの連呼しないで欲しい。恥ずかしい。
 だがコノエの方が よりもよほど恥ずかしそうだ。俯いた顔は赤かった。

「やっぱり知らなかったんだ……ていうか、本当にバルドに聞いたんだ」

  が問うと、コノエはこくりと頷いた。そして を見ると不安げに言った。

「その……大丈夫なのか? 血を流すって――」

「ん? ああ、全然。怪我とか病気じゃないから」

 これ以上コノエを恥ずかしがらせないように、何でもないことのように が笑って言うと、コノエもようやく安心したようだった。
 
「それよりこれ……君が作ったの? 美味しそう」

 自然と話題を逸らすと、コノエが頷いた。何でも、バルドに教わったのだそうだ。中に見える野菜の大きさは不揃いだが、一生懸命作ってくれたのだろう。その心遣いに は嬉しくなった。
  が口をつけると、コノエが心配そうに見守る。そんなにまじまじと見ないで欲しいのだが、そうとは言えず は一口啜ると顔を上げた。

「美味しい。……ありがと」

  がそう言うと、コノエはパッと頬を染めて、「そんな事ないだろ……」とか何とか呟いた。俯く顔とは裏腹に、その鉤のある尾が左右に大きく揺れている。……照れているのだ。それを見た は叫び出したい衝動に襲われた。

(あーもー、可愛い――!!! 抱き締めたいッ!!)

 思わず不埒な衝動にうずうずと駆られながら、 はスープを飲み干した。異常に早いスピードであった。



「ご馳走様! さあ、やるわよ!」

 気合十分、 が剣を前に叫ぶとコノエがビクリと飛び退いた。そのまま逃げるかと思ったが、コノエは椅子に座りなおした。どうやら の仕事を眺めるようだ。

「見ていていいか?」

「ん? いいよ。でも触った方が良く分かると思うよ」

 手招きをしてコノエに剣を抑えさせる。これ幸いとばかりにコノエを助手に、 は剣を研いだ。
 助手ゲット。そんな の含み笑いには気付かず、コノエは精力的に手伝ってくれた。
 あれこれと質問してくるコノエに答えていると時間はあっという間に流れた。充実した時間だった。



 夕方、バルドが夕食のために食堂を開けると、そこには剣を手に若い二匹の猫が並んで眠っていた。
 疲労困憊になるまで剣を研ぎまくった とコノエの、成れの果てであった。


     END



 






 

 

 

 

 

 

 

 


  アサト編


 寝転がっていると、痛みはどんどんひどくなってきた。寝台に爪を立てる。
 ――痛い、痛い……。
 薬草でも擦ろうと思って顔を上げたが、 はすぐにまたうずくまった。……痛み止めは、この間アサトに使ってしまったのだ。

 ひとり低く唸り声を上げて耐えていると、ふいに扉がノックされた。

「……誰……」

「あ、俺だ……」

 どうやらアサトのようだ。 が立ち上がって鍵を開けると、アサトが中に入ってきた。そのまま無言で立ち尽くす。

「何……」

  が顔を上げるとアサトは目を彷徨わせていたが、やがて の顔を見て心配を滲ませた声音で言った。

「その……大丈夫、か。お前、顔色が悪い」

「んー、ちょっと痛いかな。でも病気じゃないから……」

「痛いのなら、横になっていた方がいい。……歩けるか?」

 不安げなアサトに軽く笑うと、 は再び寝台に身を横たえた。アサトが覗き込んでくる。

「……あの主人猫に頼んで、痛み止めでも作ってもらうか?」

「大丈夫よ。なんか私、重病みたいね」

  が苦笑すると、アサトがしゅんと項垂れた。

「その、さっき……すまなかった。気付かなくて……」

 ぼそぼそとアサトが呟く。何のことだろうと が思い返すと、ようやく思い当たった。――ああ、あれか。

「いいわよ、別に。私も忘れていたくらいだから――ッ、たた、う〜〜」

  が笑おうとすると、またも急激に腹部が痛んだ。顔を歪めて耐える。
 今回は珍しく痛みが強いようだ。いつもは気にならない程なのに、他の猫がいるときに限って痛むとは。タイミングの悪さに は心の中で舌打ちした。

、平気か」

「平気よ……って、え、何してんの……」

 それまで心配そうに を見つめていたアサトが、突然寝台に上がりこんできた。そしてそのまま壁に背を向けて座ると、 を引き寄せる。
 咄嗟のことに身が固まるが、アサトの腕からは逃れられない。 は慌てて叫んだ。

「ちょっと、やめなさい!」

「すまない。少し、我慢してくれ――」

「何言って……ッ」

  が言葉を止めたのは、アサトの手が下腹部に触れてきたからだ。 の身体がビクリと震える。

「少しの間だけだから……」 

  は慌てて手を除けようとしたが、思い留まった。アサトの声が真摯だったのと、手が優しく腹部を撫で始めたからだ。

「…………」

 軽く押し当てられた手がゆっくりと下腹部をさする。大きな手のひらから熱が染み込んできた。

(あ、あったかい……)

 アサトからは全く不穏な気は感じられない。気恥ずかしさに身体が硬直したが、しばらくすると は息をつき、緊張に強張った背から力を抜いて背後のアサトにもたれ掛かった。
 ――折角暖めてくれるというのだ。どうせなら甘えてしまおう。

 その瞬間にアサトの顔が染まったことなど、 には知る由もなかった。



 しばらくすると、腹部から不快感が少しずつ引いてきた。背後から包み込まれるように温められ、身体が温かい。

「痛くなくなってきた……」

  がそう告げると、アサトが「そうか」と答えた。その振動が にも伝わる。

「月のものの痛みには、ここを温めると良いと聞いた」

「そう。……誰かに、したことがあるの?」

 アサトの発言に、 の胸がかすかに痛んだ。そういえば、前にずっと雌と一緒だったと言っていた。もしかしたらつがいだったのかもしれない。

「いや。聞いてはいたが、するのは初めてだ。 以外にしたことはない」

「……そう」

 アサトの発言を受け、 はわずかに赤くなった。一体自分は何を聞いているのだろう。
 だが、どこかホッとしたのも事実だった。

 そのまま手のひらの感覚を追っていると、急激に眠気が襲ってきた。
 起きたばかりなのに。そう思うが、抗えない。 は温かな体温に身を委ねた。


 
 夕方―― につられて寝入ってしまったアサトが、部屋から叩き出された。
 陽の月は沈み、空は既に深い群青に染まっていた。 


   END






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ライ編


 そのまま寝転がっていると、扉がノックされた。 が歩いて行き扉を開けると、ライが目を見開いて立っていた。

「……、確認ぐらいしろ。阿呆猫が」

「……やって来といていきなり何なのよ。喧嘩売ってんの?」

 扉を開きがしら、いきなり叱られた。……一体何だというのか。
 先程の静観のことも思い出し、 が不快を込めてライを見上げると互いの間に沈黙が落ちた。

「…………」

「…………」

 やがて、ライが溜息をつくと目を逸らした。……勝った。 は内心で拳を握った。

「その様子では大丈夫そうだな。……出られるか」

「え? ああ、外。いいわよ、大丈夫」

 ちら、と を見てからライが顎をしゃくった。どうやら外出に同行させてくれるらしい。
 今日は特に用事がないはずだが、腹痛も気にするほどではないし、気分転換に良いかと思って は頷いた。




「ねえ、どこ行くのよ」

 宿を出て、 は小声でライに話し掛けた。ライは珍しいことに に合わせてゆっくりと歩いてくれているようだが、今日は天気も良く道が混み合っている。白い尾を追っていないと、はぐれてしまいそうだった。

「……黙ってついてくればいい」

「…………」

 いつもながらの尊大な物言いにカチンと来るが、 は溜息をついてそれを散らした。こんなことでいちいちムッとしていてはこの猫と出掛けることなど出来ない。慣れろ。 はそう自分に言い聞かせた。

 やがてライは、食堂と思しき店に入り、席に着いた。 が意外に思って呆けていると、ライは何事かを店員に告げて に視線を向けた。 もしぶしぶ席に着く。

「ごはん、食べたかったの……?」

 小声で話しかけると、「そうだ」と返答が返ってきた。だったらバルドに頼めばいいではないか、 がそう笑って言うと、「あいつの作ったものなど食えるか」と憮然とした様子でライが告げた。

 いつもながらの徹底した嫌いぶりに、 が思わず吹き出す。それにライが不愉快そうに応え、 がからかっているうちに、いつのまにか料理が運ばれてきた。
 湯気を上げる料理が の前だけに置かれる。それを見て は目を見開いた。困惑した様子の店員が去り、 はライに話し掛けた。

「……なんで私だけなの」

「俺が熱いものは不得手だと知っているだろう。……いいから食え」

「知ってるけど……でもこれ、何」

「見れば分かるだろう。鶏の肝臓と、こっちは珍種のホーレンソウとか言ったか。貧血に良く効くらしい」

「貧血……」

「そうだ。……まだ顔色が悪いだろう」

「…………」

 偉そうだが、どうやら の身体を気遣ってくれたらしい。……嬉しい。即効性はないと思うが、 は素直にそう思った。しかし――

「これ、食材じゃない……そのまま食べろって言うの?」

「…………」

 出された皿には湯気を上げるレバーとホーレンソウとやらが乗っていた。これでは料理とは言えまい。
 食べられないこともないが、できればこのまま食べたくはなかった。

「はぁ……どうせレバーとホーレンソウを出せ、とでも言ったんでしょ。これじゃ店員が呆れるわけよ」

「…………」

 ライが黙り込む。どうもこの猫は微妙に不器用なところがある。まあ少しくらいそういうところがあった方が、同じ猫として親近感は持てるのだが。 は苦笑すると、店員を呼び止めた。

「すみません、これを炒め物か何かに作り変えて下さい。それから、これをスープにして……そう、ふたり分で一つは冷製にして下さい」

 低い声で が告げると、店員が皿を下げていった。ライが を睨む。

「……おい」

「何? いいじゃない。丸々あったからスープがたくさん出来るわよ」

「お前が食わないと意味がないだろう」

「私はレバーも食べるでしょうが。……ひとりで食べるのは嫌よ」

「何だと」

「一緒に食べて欲しいって言ってるの」

「…………」

 ライが押し黙る。それを眺めて は小さく笑った。



 やがて、今度こそ料理が運ばれてきた。炒め物と、スープが二皿。緑のスープをすくって舐めると、ミルクに溶けてわずかに草の味がした。――おいしい。 
 ライを見ると、黙々と冷製スープをすくっている。どうやらあちらも不味くはないようだ。 はこっそりと笑った。

「ライ」

「何だ」

「――ありがと」

 珍しく素直に が告げると、ライは何ともいえない顔で白い尾を振った。
 

END


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





  バルド編


「うー、あいたたた……」

  が鈍痛と共にうずくまっていると、扉がノックされた。

「俺だ。入っていいか?」

 聞こえてきた声はバルドのものだ。「ちょっと待ってて」と が返すと、軽く鍵穴を回す音がした。マスターキーだ。 が扉を開けることなく、バルドが部屋に入ってきた。

「何よ……」

 先程笑われたこともあり不快感を込めて寝台から睨みつけると、バルドは手にしていた盆をテーブルに置いて寝台へ歩み寄ってきた。

「だいぶ辛そうだな。大丈夫か?」

「……さっきは助けてくれなかったクセに……」

 本気で怒っているわけではないが、拗ねた口調で が言うとバルドは肩を竦めた。

「悪かったよ。どう返すのか見てみたくてなぁ」

「アンタね……」

「冗談だって。それより、薬湯を作ってきたんだが、飲めるか?」

「……薬湯……」

 薬湯、と聞いて思わず の顔が歪む。あれは良く効くが、とにかく不味いのだ。できれば飲みたくはなかったが、痛みが強いのとバルドがせっかく作ってくれたのもあって、 は頷くと手を伸ばした。

「……これ、薬湯?」

 バルドが差し出した椀には確かに温かい汁が入っていた。しかし、薬湯につきものの青臭い臭いが全くしない。それどころか、甘い果実の香りがした。

「ああ。蜜と果物の汁がたっぷり入っている。飲みやすいはずだ」

「そう……」

 バルドに促されて、 は恐る恐る椀に舌をつけた。ほのかに温かくて、スパイスが効いている。

「おいしい……」

  が思わず呟くと、バルドが笑った。そのまま は薬湯を飲み干した。
 バルドがにこにこと椀を受け取る。その顔を眺めて、 は複雑な気持ちになった。

「随分と手馴れているわね。……何匹そうやって介抱してきたんだか」

「お? なんだなんだ、ヤキモチか? いやぁこの歳になって参るね」

 バルドがすかさず調子に乗るのを、 は冷たい目で見やった。

「馬ッ鹿じゃないの。――なんか、親切すぎて胡散臭い……」

「おいおい。そりゃないだろうあんた。弱ってる奴をいたぶる趣味はないぞ俺は」

「嘘。アンタ、嬉々としていたぶってそう」

 なおも疑いの目を向けると、バルドが呆れたように溜息をついた。

「あのな……。そうは言うが、こうやって薬湯を持ってきたのは初めてじゃないだろ」

「そう、だっけ?」

「そうだよ。何年前かな。あんたの初めてのとき」

「……ッ、あ……そういえば……」

 バルドの言葉に、 は記憶を探った。そういえば、そんなこともあった気がする。
 藍閃への旅先で は初めて成熟の証を迎え、戸惑ったのだ。とうに母親もなく、どうすればいいのか分からなかった。そんなときに手を貸してくれたのが、このバルドだった。

「あんたの親父さんもいたけど、二人してうろたえてたよな」

「そうそう。父さんアワアワしてて――アンタが、近所の雌とか呼んでくれたんだっけ」

「ああ。あの時も痛みが強くて大変そうだったな。いつもは平気なのか?」

「うん……あー懐かしい」

 恥ずかしさもあったが、あの時はバルドがとても頼もしく思えたのだ。少女心にも、ちょっとときめいたような気もする。
 その時の光景を思い出して がひとしきり笑うと、バルドが静かに立ち上がった。立ち去るその背に慌てて声を掛ける。

「ありがと。それから……疑ってゴメン」

「いいさ。それより、元気にモノが来ているようで良かった。――これでいつでも俺の子が産めるな」

 最後にニヤリと笑って、バルドが部屋を出て行く。それを は唖然として見送った。



「な、な、何考えてんのよあのエロ猫――ッ!!」

 青い空に、 の叫び声が響き渡った。

 

   END

 

 

 


(2007,1,22)

TOP.