Omnes una manet nox. -Digest- 








 出よう、この村を――




 父親が失躯で他界して一巡りの月。鳥唄に住む鍛冶師の主人公 は、ある宣告を言い渡される。

 ――明日、雌は全員長の家に集まるように
 
 雌の「確保」と雄との「交配」。突然の召集は に決断を迫らせる。

 誰が囚われてやるものか。反発を覚えた は、剣を片手に村を出る決意をした。
 目指す先は藍閃――以前父と、行商に通った街だった。









「アンタも夜盗? あいつらの仲間なの?」

「ほう、俺が夜盗に見えるか」


 藍閃へ向かう森の中で、 は一匹の白猫に窮地を救われる。
 を一瞥した怜悧な猫は、ただ一言を告げて再び森へと消えた。


「ライだ。大声で叫ぶな! それから顔を隠せ阿呆猫!」










藍閃に着いた は旧知のバルドの宿に辿り着いた。


か。あんまりデカくなってて驚いた。美人になったな、あんた」

「そりゃどうも。……ところでさっき誰と間違えたのかを知りたいんだけど?」

「あー、いつだかに関係を持った雌かと勘違いしてなー……て、おい、そんな目で見るなよ」

「……サイテー」






 
久々の再会に心が和んだ は、そこで一匹の猫と出会う。顔を隠すフードを払い、 は告げた。



「こういう訳で、隠さなきゃやってけないのよ」

「雌……」




 彼の名はコノエ。黒い尾・黒い耳と手足の痣をもつ、呪われた火楼の猫だった。













「キミ、すごーく美味しそうな匂いがするんだよねぇ……」

「あ? マジかよ。どれどれ……」



 
 やがて悪魔との(一方的な)出会いを経て、 は賛牙の能力を開花させる。
 森を行く は最後に、手負いの黒猫と巡り会った。






「あと、その、名前……」

「名前? よ。アンタは?」


「アサトだ」


「なによ」 

「いや……いい名前だと、思って」

「……ありがと」











 猫との出会いを繰り返し、そして物語の幕は開ける。












――楽しんでもらえたかな、余興は


 合流した ・アサト・コノエ・ライは悲劇の村で、仮面の猫と対面する。
 その猫の名はリークス。伝説にも等しい、闇の魔術師であった。


「ほう、雌か……。――ッ、その顔……ッ」

「お前……知ってる――。どうして…!?」




 知らないはずなのに知っている。身を苛む感覚に衝撃を受ける
 そんな にリークスは低く告げた。



「知りたいのなら、私を追ってみろ。金の髪の雌猫よ」




 雌猫の闘いは、この瞬間から始まった。















コノエを苦しめて、 に傷を負わせた……。お前ら、許さない!




おまえ……きんのめす! おまえだけは、ぜったいにゆるさない!



俺が共にいれば――そんな怪我などさせなかった。




私はその尻尾好きだな、うん。

――物好きだな、アンタ。





「アンタ、結構いい猫ね」

「あ? ……あんたな、そういう発言は誤解を招くから控えた方がいいぞ」












 否応なしに闘いに巻き込まれながら、雌猫は紡ぐ。

 ――ただ一つの、の歌を。















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