京城にて



先生、元気かなぁ……。会いたいな」

「ああ? 誰だよ、って。ていうかお前、伏龍以外にも師匠がいんのか?」

「あ、そっか。仲謀は知らないんだよね。先生っていうのは――……」



「……ふーん。お前の元いた世界で、お前ぐらい歳の奴の怪我とか病気の面倒見てた、ねぇ……」

「仲謀だって変わらないじゃん。……こっちに来てからはさんって呼んでたんだけどね」

「はっ。お前と比べりゃ、しっかりした女だったんだろうな。……で? なんでいきなりそいつのこと思い出したんだよ。まさか……玄徳んとこに戻りたくなったのか?」

「ううん、違うよ。今日たまたま、これが届いて――」

「書簡? ……誰からだよ。玄徳か」

「なんで睨むの。意味分かんないよ。……これは、さんから。玄徳さんからの荷と一緒に届いて――でも、許都から出したのを転送してくれたみたい」

「許都って……なんで孟徳軍から手紙が届くんだよ」

「うん、だからね……さん、今は許都にいるんだって。それで、孟徳軍の人と結婚することになったって――」

「……はああ?」



「なんつーか……お前もそのって奴も、破天荒な人生だよな。元いたとこから飛ばされて、それぞれ別の場所に落ち着くことになってんだから」

「うん……そうだね。でも、無事で良かった。心配してたんだ」

「相手は孟徳軍の誰だ? お偉方ならそれなりに名前知ってんぜ」

「さすがに名前は書いてなかったよ。でも、さん美人だから、きっと格好いい人が相手だよ」

「……美人なのか」

「うん。ぱっと見は少しクール…ええと、ちょっとだけ冷たい感じだけど綺麗で……。あ、そういう点では公瑾さんに少し似てるかも。でも、笑うとすごく可愛いの」

「公瑾……? あいつが、笑うと可愛い…?」

「い、いや、笑ってない時の雰囲気がって意味で。大人だし、すごくしっかりしてるし、こっちに来てからも医官としてちゃんと働いてたし……」

「へえ。才色兼備ってやつか。お前とは大違いだな」

「もう! 分かってるよ。……あ、そうそう。美人だし話してみると優しいから、男子にも結構人気があったなぁ…」

(白衣脱ぐと、実は胸も大きいし……。――っと、これは仲謀には言えないよね。うう、羨ましいなあ、さん……)

「男……? お前の言う『学校』ってやつ、男もいたのか!?」

「え? うん。クラス……えっと、いつも一緒に勉強してる集まりの、半分は男子――」

「っ……! お、お前、も……その、人気、が――」

「え? なに? 聞こえないよ、仲謀」

「っ……! 何でもねーよ! ……それで、その手紙。近況報告だけだったのかよ」

「あ、えっと……うん。元気にやってるから、心配しないで。体に気を付けてって。……返事出したら、届くかな…?」

「許都か……。仕方ねーな。なんか適当な要件のついでに、書簡も届けさせてやるよ」

「本当……? ありがとう、仲謀…!」

「う、わっ……! 馬っ鹿……急に抱きつくなよ!」

「あ、ご、ごめん。……はぁ、それにしても……さんの花嫁姿、綺麗だろうなぁ……」

「……さすがに、お前を許都に行かせるのは無理だぞ。孟徳のとこなんて行かせたら、今度こそどうなるか――」

「うん、分かってるよ。だから想像するだけ。……髪を結って、ああいう赤い衣装で――素敵だろうなぁ」

「…………。そ、んなに、着たいなら………着ればいいだろ。俺なら、いつだって……」

「え?」

「その、花嫁いしょ――」


『ちゅーぼ―――!!!』

『どーこ――!? ……あ、花ちゃん見ーっけ! 仲謀も見ーっけ!!』


「げっ…! 大小……!」

「あ、大喬さんと小喬さん」


「ねぇねぇ、何してるのー? こんな物陰で」

「逢引してたのー? やるじゃん仲謀! ヒュウヒュウ!」

「バッ……!! ……な、なんだよ。何か俺に用でもあんのか?」

「うん、あのねー。武将のみんなが『仲謀様は花殿とイチャつかれてるから、いつまでも軍議が始められない』って嘆いてたよー?」

「っ…!? げっ……もうこんな時間かよ!」

「愛は時間を奪うって、ほんとだよねー」

「うるせえ! ……行くぞ、花!」

「えっ。……あっ、待ってよ仲謀! 手、掴まなくても走れるよ……!」

「いいから来い!」



「……何もなくても、仲謀は花ちゃんと手、繋ぎたいだけなのにねー」

「鈍いよね、花ちゃんも。……あれ。お手紙、落っことしてる。届けてあげなきゃね!」

「そうだね。……ふふっ。桃色の紙だ。幸せのご報告かな」

「幸せがいいよ。みんな、仲良しがいいよね……!」





 ――花。住む場所が離れてしまっても、いつもあなたの無事と幸せを願っています。
 いつか花にも、大切な人ができたらいいね。

 私は今、幸せです。





 END


腰痛は治りました。…が、載せてるのがエロだけってどうなのよと思いなおし、ちょっと書いてみました。
魏のどちらがお相手なのかは、ご想像にお任せします。
原作で「控えめ」と言われてた花の体形ですが、スチル見るとそうでもないと思う。でもちょっと気にしてたら萌え。
結局仲謀は、花ちゃんのことしか見えてないってことで一つ。…くそう、可愛いなぁ王子!
(2010.12.11)